「身元引受をしてくれる団体があるそうですね。具体的には何をしてくれるんですか」。担当している利用者さんやそのご家族から、こう聞かれて答えに詰まった経験のあるケアマネジャーや地域包括支援センターの方は少なくないはずです。入院の保証人のこと、と答えれば間違いではありません。けれども、それだけでは身元引受の一部しか伝わりません。

身元引受の中身は、日々の支払いから入院・施設入居、看取り、亡くなった後の手続きまで広がっています。範囲が広すぎて、一言では説明しにくい。現場でそうした声が上がっていることから、一般社団法人ロングライフサポート協会では、身寄りのない高齢者が直面しやすい困りごとを31の事例にまとめました。

この記事では、その31事例を5つの場面に分けて紹介し、それぞれの場面で協会が何をするのかを整理します。利用者さんへの説明や、支援の方向を決めるときの手がかりとしてお使いください。

「身元引受をします」だけでは伝わらない理由

身元引受という言葉から多くの人が思い浮かべるのは、入院や施設入居の書類に名前を書く「保証人」の役割でしょう。しかし実際に身寄りのない方を支えてみると、書類の署名は入口にすぎません。

入院すれば、着替えや日用品を届ける人が要ります。退院が決まれば、送迎や自宅の環境を整える人が要ります。施設に移るなら、元の住まいの解約や電気・ガス・水道の停止も必要です。亡くなった後には、遺体の搬送から葬儀、役所への届け出、部屋の明け渡しまで続きます。

どれも、家族がいれば自然に担われてきたこと。身寄りがないと、その一つひとつが医療機関や介護施設、行政、大家さん、そしてケアマネジャーやソーシャルワーカーの手元に残ります。身元引受とは、この「家族が担ってきたこと」をまとめて引き受ける仕組みです。範囲が広いからこそ、具体的な場面で示すと伝わりやすくなります。

身寄りのない高齢者の困りごと31事例を、5つの場面で見る

31事例は、元気なうちから亡くなった後までを、時間の流れに沿って5つの場面に分けています。場面ごとに、協会がどのように対応するかもあわせて記します。

健康期・日常生活(6事例)

  • 日常の見守り・安否確認が必要になる場面
  • 公共料金・家賃・携帯料金などの支払い滞納リスク
  • 日常的な金銭管理(預貯金の管理、詐欺被害の防止)
  • ゴミ屋敷化・住環境の悪化の防止
  • ペットの世話・多頭飼育への対応
  • 孤独死リスクへの日常的な対応

この時期の支援の中心は、金銭管理。協会では支払いの代行や年金の手続きを行い、税理士の監修のもとで毎月の金銭管理表を作成し、お預かりしている通帳の残高のコピーを添えてご報告しています。希望に応じて電話での見守りも契約できます。

医療・入院(6事例)

  • 緊急時の連絡・駆けつけ(救急搬送時の同乗など)
  • 入院時の身元保証人・緊急連絡先としての対応
  • 手術・治療方針の同意・意思決定の支援
  • 入院費の保証金の支払い・医療費の支払い代行・限度額適用認定証の手続き
  • 入院中の物品の持ち込み・送迎
  • 退院時の送迎・自宅の環境の調整

入院時には身元引受人として署名し、入院費や医療費の支払いも担います。治療方針については、本人の意思を確かめながら決められるよう支えます。病院への入退院の手続きや付き添いも、日常生活支援として行っています。

介護・施設入居(7事例)

  • 介護施設・高齢者住宅の探索
  • 介護施設・高齢者住宅への入居時の身元引受・保証人
  • 入居契約の手続き・保証人としての対応
  • 施設入居後の生活支援・見守り
  • 転居・施設間の移動の支援
  • 電気・ガス・水道の停止手続き
  • 残置物の処理・不動産の売却・賃貸借契約の解除

協会は介護に起源を持つ法人で、提携する紹介会社とともに、ご本人の財産の状況と体の状況に合う施設を探します。入居時の身元引受や連帯保証人の手続き、施設との調整、施設利用料や介護費の支払いまで対応します。引っ越しの手配は提携の引越業者、財産の整理・処分は提携の不動産業者と連携します。

終末期・看取り(3事例)

  • 終末期の意思決定の支援(延命措置・尊厳死など)
  • 危篤・死亡時の即時連絡・駆けつけ(24時間)
  • 看取りへの対応・付き添い

最期をどう迎えたいかは、元気なうちに聞いておかなければ分からないものです。協会では契約の際にエンディングノートをお渡しし、ご本人の希望を書き残していただいています。

死後・終活(9事例)

  • 死亡時の遺体の搬送・安置
  • 葬儀・納骨の手配と執行
  • 親族などへの連絡・手配
  • 死亡届・役所の手続き(年金の停止・保険の解約など)
  • 遺品整理・家財の処分・部屋の明け渡し
  • 残置物の処理・原状回復
  • 施設の退去手続きと精算
  • 相続手続き・財産の整理
  • 各種契約の解約・清算

死後事務委任として、遺体の引き取り、葬儀の手配、施設の居室の明け渡しと残置物の処理、納骨、年金の停止までを担います。葬儀は提携する葬儀社、相続や遺言書の作成支援は提携する弁護士・行政書士と連携します。

現場では「チェック表」として使われ始めている

31事例は、読むための一覧というより、当てはまる項目に印を付けるための表。協会では、地域の支援センターなどに向けて、31事例に☑欄と対象者の記入欄を付けたパンフレットを作り、お渡しするケースが出てきているといいます。

使い方は単純で、利用者さんの状況を思い浮かべながら、心配な項目に☑を付けていくだけ。印が1つだけの方もいれば、いくつもの場面にまたがる方もいるはずです。

印の付いた表をそのまま相談の材料にしていただければ、何に困っているのかを一から説明する手間が省けます。協会の側も、どの場面から支援を組み立てればよいかをすぐに把握できます。ケアマネジャーや地域包括支援センターの方にとっては、「こんな困りごとがあれば、まとめて相談できます」と利用者さんに伝えるための道具にもなります。

身寄りのない高齢者への支援が、制度の上でどこで止まりやすいのかは、過去の記事「地域包括と居宅支援の現場から見る身寄りなし高齢者支援の課題」でも整理しています。

身寄りのない高齢者を支える、協会の体制

一般社団法人ロングライフサポート協会は2011年に設立され、これまでに全国17都道府県で320名の方を支援してきました。そのうち185名は生活保護を受けている方です。経済的な状況にかかわらず、身元引受を必要とする方を受け入れてきました。

協会の身元引受サービスは、次の内容を一つの窓口で扱います。

  • 介護施設の探索と入居の支援
  • 入院・施設入居時の身元引受と身元保証
  • 日常生活の支援(入退院の手続き、緊急時の対応、付き添い、買い物の代行、行政の手続き)
  • 税理士の監修による日常の金銭管理
  • 引っ越しの手配と、財産の整理・処分
  • 死後事務委任と、相続・財産管理の支援

身元引受の代理店は全国128拠点に広がっています。関東や九州を中心に、地域の実情に応じた支援を行っています。サービスの詳しい内容は「身元引受サービス」のページをご覧ください。

身元引受だけでは足りない場面もある

協会は31事例のいずれにも対応していますが、身元引受の契約だけでは解決しない場面もあります。相談の前に知っておいていただきたい点を挙げます。

一つは、判断能力が大きく低下した後のこと。成年後見制度の利用が必要になる場合があり、その法的な手続きは弁護士などの専門職の領域です。協会は提携する弁護士・行政書士と連携して対応します。

二つ目は、遺言。契約の際にお渡しするエンディングノートには、遺言書としての効力がありません。相続を希望どおりに進めたい場合は、法的な手続きに沿った遺言書の作成をお勧めしています。

三つ目は、ご本人の意思。身元引受は、ご本人が契約を結ぶことから始まります。ご本人が支援を望んでいるかどうかを、最初に確かめておくことが大切です。

よくある質問

亡くなった後の手続きは、一部だけ頼めますか

死後事務委任は選択式です。たとえば、亡くなった後のことは親族が行うという場合は、その部分を選ぶ必要はありません。葬儀から納骨、施設の退去時の精算までを依頼される方が多くなっています。

生活保護を受けていても利用できますか

利用できます。協会がこれまでに支援した320名のうち、185名が生活保護を受けている方です。

家族がいても相談できますか

相談できます。たとえば、亡くなった後の手続きは家族が行うという契約を結ぶこともできます。

契約をやめたいときはどうなりますか

いつでも解除できます。解除の通知が協会に届いてから30日が手続きの期間となり、その後に解除となります。

まとめ

身寄りのない高齢者の困りごとは、日常生活、医療・入院、介護・施設入居、終末期・看取り、死後事務の5つの場面にわたり、31の事例に整理できます。身元引受とは、これまで家族が担ってきたこれらの役割をまとめて引き受けることです。「保証人になる」だけではありません。

利用者さんへの説明に迷ったときは、31事例の中から当てはまる項目を一緒に確かめてみてください。一般社団法人ロングライフサポート協会では、印の付いた項目が一つでも、ほとんどすべてでも、ご相談をお受けしています。

お問い合わせ

〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前3丁目19-14ビーエスビル博多3階A2号

TEL 0120-196-119

定休日:土日祝